ジャスミン
何となく力が抜けたところで掴まれていた手がグッと強く引かれ、そのまま座らされる格好になった。

『あの二人お似合いですね?』

意味ありげな表情で汐里が颯太郎の顔を覗き込む。

『うぜぇ女だな。』

『っ!何ですか⁉︎』

佐伯部長が面倒なものを見るかのような冷たい視線を送る。

汐里もまたその視線にイラっとすると颯太郎の腕を掴んで立ち上がる。

『…じゃあ、あの二人がどうなるか、確かめに行きましょ?』


半ば強制的に汐里に連れられて店の外に出る。茉莉の姿をすぐ視界に捉えた。

だが、茉莉は西川に手を引っ張られるように歩いて…やがて手を握りながら駅の方角へと進んでいく。

『……。』

颯太郎は何も言葉を発することもなく、ただ小さくなっていく二人の姿を見つめた…。

『倉田さんも満更でもない感じですね〜!』

汐里が得意気に颯太郎の腕に手を掛けながら話しかける。
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