ジャスミン
『…目障りだ!どっか行けっ!』

苛立ったように腕に絡まる手を払い除けると颯太郎は店の中へと無表情で 戻っていく。

汐里は一瞬怯えた表情をするものの、その顔は次第に、悔しさを滲ませていく。

『っ⁉︎…まぁ、いいわ。後はあいつが上手くやるでしょ。』

すでに姿が見えなくなった駅の方を見ると不敵に笑みを浮かべたー。



颯太郎は自分の中に湧き上がる負の感情をどうしたら良いか分からなかった。

取り敢えず気は乗らないままが、そのままな訳も行かず部屋へと足を進めた。

『あれー?課長、汐里ちゃんは一緒じゃないんですかぁ?』

部屋に戻ると意味深な視線を投げかけながら部下たちが囃し立てる。

『……。』

ピクッと眉を動かしただけで何も言わない颯太郎に部下たちの勝手な想像は膨らむ。

『あーぁ、汐里ちゃんは皆のアイドルだったんだけどなぁ…課長が相手なら勝ち目ないよな。』

残念そうに部下の一人が話し出すと、酒の勢いか周りも賛同する。
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