ジャスミン

『…でも、三上さん可愛いけど、俺は倉田さんタイプかも！』

『何か分かるわぁ！一度でいいから罵倒されてみたい！』

『何それ⁉︎気持ち悪過ぎるー！』


男女入り混じって盛り上がる中、誰も颯太郎が最上級に機嫌が悪くなっていることにまだ気づいていない。

『何の話ですかぁ？汐里も入れてくださいよぉ！』

何食わぬ顔で汐里は戻ってくると、輪の中に入っていく。

自分の場所に戻ると、つい携帯をチェックする。

分かってはいたが、何の連絡もないことにいらぬ想像が働き、それを振り払うかのようにテーブルの上に画面を見えないようにして置く。

僅かに残った炭酸の抜けた生温いビールを飲み干したところで、隣で黙って様子を見ていた佐伯部長が煙草を持って立ち上がる。

『…ちょっと付き合えよ。』

颯太郎は無言で部長の顔を見ると、彼の後を着いてまた部屋を出た。


『…ふーん、良いこと思い付いちゃった。』

汐里は佐伯部長と颯太郎が部屋を出たことを確認すると、さりげなくテーブルの上にある携帯を自分の鞄にしまったーー。