ジャスミン
更衣室に寄ってから自分のデスクに行く途中、視界に入るのは女子社員と笑顔で話す西川の姿。

今となってはあの胸キュンさせる笑顔も偽りにしか見えず、嫌悪感しか感じない。

茉莉は足早に自分の席へと向かう。

一緒に仕事をしていく以上、嫌でも関わっていかなければならない。茉莉にはかなり厄介な悩みの種になることは間違いないだろう。

茉莉はデッサンを綴じたファイルを取り出すと今までのものを振り返るように捲っていく…。


どれも大切な子どものような存在。このデザインを生みだすために今まで必死にやってきたんだ…私にはやっぱり仕事しかない。

茉莉はデッサンノートの真っ白なページを開けると、カラフルな色鉛筆たちを取り出す。そのうちの一本を手にすると、真っ白な紙の上をはしらせ始めた。

普段以上の集中力を発揮し、黙々と描く姿は声を掛けられるような隙はなく、最近は柔らかい雰囲気を醸し出していた茉莉は完全になりを潜めていた。
< 216 / 348 >

この作品をシェア

pagetop