ジャスミン
廊下に出ると、タイミング悪く誰も人がいない…この状況が嫌な茉莉は気持ち早めに歩いていく。

『フッ、そんなに警戒しなくても取って喰ったりなんてしませんよ?後、周りの人に不審がられちゃいますから話し方いつも通りでお願いしますね。』

随分余裕のある言い方に更に苛立ちを覚えるが、確かにあからさまに警戒した話し方では周りが不思議がるだろうことは共感できた。

『…分かった。』

茉莉は西川の方に振り向くこともなく、歩き続けた。

受付まで出るとよく知る顔が出迎えてくれたことに安堵の表情となる。相手もこちらに気づくと笑顔で手を振ってくれた。

『茉莉ちゃ〜ん!お出掛け?』

『うん、本社との打ち合わせ。』

にこにこ笑顔の美香は、茉莉の後ろから現れる西川を見つけるとあからさまに不機嫌な顔になる。

『…一緒なの?』

『僕も一緒ですよ!そんなに怖い顔してどうしたんですか?あっ、もしかして茉莉さんに何か聞いちゃいました?嫌だな〜茉莉さん意外とおしゃべりなんですね。』

西川は余所行きの笑顔を作りながら、美香に動揺することもなく、話しかける。
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