ジャスミン
無表情に立ち上がり、汐里を冷ややかに見つめるのは、茉莉の隣りに座る西川だった。

『ち、ちょっと!あなたは黙ってなさいよ!』

汐里も予期せぬ人の登場に動揺を見せた。


『確かにこの二人が別れちゃえば俺も都合が良いと思ってあんたに協力したけどさー、茉莉さんがどんだけこの仕事に誇り持ってるか知らないだろ?脛かじりのあんたなんか茉莉さんの足元にも及ばねえよ!』

『西川くん…。』

茉莉は自分を庇ってくれる不器用な彼に胸が熱くなった。

『な、何よ…あんたは黙って汐里の言う通りにしてればいいのよ!この女さえいなければ課長は私のものなんだからっ!』

『フッ、化けの皮が剥がれたな?』

颯太郎の言葉に周りを見渡すと皆、汐里の変わりように呆気にとられている。その様子に汐里も我に返ったのか青ざめている。

『あー馬鹿らしい!あんたの茶番に乗った所為で俺の今までの苦労も水の泡だわ。…皆さんお騒がせしてすいませんでした!
全ては俺とこの女の仕組んだことです。茉莉さんはこの仕事に全力で取り組んでいます。金子課長も彼女の不器用なひたむきさに惹かれたんだと思います。公私混同するような人たちじゃないので、どうか温かく見守ってあげてください。』
< 260 / 348 >

この作品をシェア

pagetop