ジャスミン
顔を上げると、そこには見たことのないくらいの立派な門構えの日本家屋が存在を主張している。

茉莉はこれから起こることを想像するもキャパオーバーで訳が分からない…。

逆らう事を到底許してもらえなさそうだが、一応紳士的な態度で接して貰えているので誘導に従ってその立派な門をくぐり後をついて行くことにした。


ガラガラ
手入れの行き届いた最早芸術的ともいえる庭園を暫らく歩くと住居であろうやはり立派な建物の前に到着する。

前を歩いていた黒ずくめの男が引き戸を開けると茉莉に中に入るよう促す。茉莉は恐る恐るその建物の中に足を踏み入れた。

『…お邪魔します。』

『お待ちしておりました。どうぞ、お入りください。』

まるで高級旅館にでも来たかのように両手をついて茉莉を出迎えたのは、品のある雰囲気を醸し出す自分の祖母くらいの年齢の女性だった。

茉莉は言われるままに靴を脱ぐと、その女性の促す方へと歩みを進めていく。

何も聞くことなく付いていくのは、先ほどの黒ずくめの男性にしても、この女性にしても言葉にこそ出ないが、茉莉を歓迎してくれているような気がしたからかもしれない。
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