ジャスミン

トントン
『母さん、颯太郎です。…失礼します。』

襖を静かに開けると一人中庭を見ながらたてたお茶に口を付ける早紀江がこちらを振り返る。

『あら、颯太郎じゃない。どうしたの？家へ来るなんて珍しいわね。』

颯太郎は部屋の中に入ると早紀江の前で正座をする。

『母さん、茉莉に何を言ったんですか？』

『まぁ、驚いたわ。茉莉さんにGPSでも付けているのかしら？』

『誤魔化さないでください！茉莉が此処に連れて来られたのは分かってるんです。』

ふふっと笑う早紀江に颯太郎は更に問い詰める。そんな颯太郎に早紀江はスッと無表情になると話し始めた。

『あなたは自分の立場をきちんと理解していますか？金子の後継者の意味を。』

『っ⁉︎分かってます！でもそれと茉莉は関係ないだろ？』

熱くなる颯太郎にも動じることなく早紀江は話を続ける。

『そんな事を言ってるようでは、到底認められるものではありませんね。あなたの周りには味方ばかりではないのですよ？彼らに攻撃されるような隙を見せてはいけないの。』

『……。』