ジャスミン
駅から十分ほど歩いた住宅街の中に大学までを過ごした実家がある。

白を基調とした西洋風ではあるが、ごく一般的な一軒家。広いとはいえない庭には母の趣味のガーデニングが四季折々の花で彩られていて、茉莉は小さな縁側スペースから庭を眺めるのが大好きだった。

「倉田」の表札の前に立つと、軽く深呼吸をしてインターホンを押す。『は〜い!どちらさま?って茉莉ちゃんじゃないっ!早くいらっしゃい〜!』

『…相変わらずね。ただいま。』

何ら変わらない母に内心ホッとしながらもアイビーをはわせてあるガーデンアーチをくぐり抜け家へと入った。


バタバタバタ…
エプロン姿の母は濡れた手をエプロンで軽く拭きながら玄関に向かってくる。

『おかえり〜!お昼ご飯まだでしょ?もうすぐ出来るの!キャー♡久々に茉莉ちゃんのお顔しっかり見たわ。パパが帰って来るまではいるでしょ?パパ楽しみにしてるんだからっ。』

まくし立てるように次々と話題を繰り出す母に早速苦笑いが出る。

『いや、ママ…取り敢えず家の中に入れてもらっても良い?』

『あらっ!何してるの?早く入れば良いじゃない⁉︎今、お茶入れるわ〜!』
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