ジャスミン
身震いするほどの寒さに目を覚ますと、辺りはすっかり暗くなっていた。

あのまま大樹と二人でストックがなくなるまで飲んで、どうでも良い話をグダグダになるまでして、そのまま寝てしまって今に至る…隣りを見るとまだ大樹は夢の中にいるようだ。

まだ酔いの覚めない身体を無理矢理起こすと、水を飲むためにキッチンへと向かう。

『はぁー。』

一気に水を飲み干すと、シンクに手をつき項垂れる。また水道のレバーを上げると冷水で顔を洗った。

ポタポタと垂れた水滴をかけてあったフェイスタオルで吸収させながらベランダへと向かう。

ガラガラ。
日がすっかり落ち、見渡す限り闇とネオンがキラキラと輝く様子を見ながら颯太郎は煙草に火をつける。

佐伯にもらったあの日から煙草の力を借りる機会がすっかり増えている。颯太郎は深く煙を吸い込むとゆっくりとそれを吐き出す。

今頃、彼女は何を思っているのだろうか?

泣いていないだろうか?

恐らく俺は別れを告げた後もこうやってずっと茉莉のことを考えながら過ごすのかもしれない…

そのことに今更ながら気付くと自嘲の笑みを漏らす。
< 303 / 348 >

この作品をシェア

pagetop