ジャスミン

〜茉莉と颯太郎〜

〜茉莉と颯太郎〜

12月24日 クリスマスイヴ。

空は雲に覆われて少し肌寒い今日。
茉莉は精一杯のお洒落をしてマンションの前で颯太郎の到着を待つ。

白のニットワンピースに黒のブーティ、上からはベージュのハーフ丈のコートを羽織り、髪型は緩めに後ろでアレンジする。いつもの茉莉に比べるとかなり女性的な印象を持つ。

自分なりに考えた結果、どうせなら一生記憶に残る一日にしようと決めた。

まるで初めてのデートかのようにドキドキしながら待っていると、視線の先から車が近付いてくる。

『はぁー。』とゆっくり息を吐き出すと、愛しい人を笑顔で迎える。

『ごめん、待たしたよな？』

心配そうに颯太郎は右手で茉莉の頬に触れる。

『ううん。私が早く出過ぎただけだから。』

茉莉も颯太郎を見つめ、微笑みながら答える。互いに一瞬の沈黙の後、目を伏せると前方に姿勢を正す。

『…じゃあ、行くか。』

『うん…。』

二人を乗せた車はゆっくりと走り出した。