ジャスミン
季節はあっという間に過ぎ去り、ショーの本番まで後一ヶ月というところまで迫り、否応なしにピリピリとした雰囲気が社内に広がっている。

そんな中、茉莉はショーのラストを飾るウエディングドレスの最終チェックをしていた。

『…キレイ。』

イメージした通りいやそれ以上の出来映えにデザインした張本人なのに感嘆の声を漏らす。

『さすがっすね!』

隣りに並ぶ西川も自分のことのように完成を喜ぶ。

『せめてデザイナーとして茉莉さんの横に並びたいって思ってましたけど、まだまだ先は長そうです。』

『何言ってるの⁉︎西川くん充分すぎる程戦力になってるんだからね!期待してるよ、エース候補‼︎』

茉莉は西川の肩をポンッと叩くと飾られているドレスに近づく。

イタリアンカットレースをふんだんにあしらったロングトレーンドレス。胸元には小さなジャスミンの花が幾重にも散りばめられている。

ジャスミンの花言葉は「優美」「愛らしさ」。このドレスを着こなす花嫁さんを想像すると頬が緩んだ。

そして茉莉はこのドレスに全ての想いを託したのだ。
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