ジャスミン
『茉莉さんがずっとつけてるバレッタとこのドレスの花って一緒ですよね?』

『え…あ、うん。』

相変わらず鋭い指摘にドキッとするが、茉莉は右手で後頭部に留められたバレッタを優しく撫でると自然に笑みを漏らす。

『…それ、金子さんから貰ったんじゃないんですか?』

茉莉の微々たる変化も見逃さないような西川の様子に流石に驚く。

『もしかして西川くんって…人の心が読めるの⁉︎』

全く見当はずれな茉莉を冷ややかに見ると大きな溜息をつく。

『あーもう!どうしてそうなるのかなぁ⁉︎…茉莉さん、金子さんのこと全然諦められてないですよね?良いんですか!噂だと近々どこかの令嬢と結婚するかもしれないらしいですよ!』

『…そうなんだ。前から思ってたけど、そのスパイ並みの情報網すごいよね。』

茉莉は感心するように言うと、ドレスの細かい箇所をチェックし始める。そんな彼女をもどかしい気持ちで西川は見つめながらまた一つ溜息をついた。
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