ジャスミン
到着した先は、母が古くから贔屓にしている老舗料亭。
車から降りると迷うことなく中へと入って行く。
『いらっしゃいませ。お待ちしておりました。』
女将の丁寧な出迎えに軽く挨拶をし、見合いの席が設けられているという個室に向かう。
部屋の前で軽く息を吐くと、覚悟を決める。
トントン
『失礼します。』
静かに襖を開けると部屋にいる人間の視線を一気に浴びているのが分かる。
『颯太郎こちらへ来なさい。』
声のする方を向くと、母が隣りに座るように促す仕草をする。颯太郎はそのまま言われた通りに空けてあるスペースに座る。
向かい側からの射抜くような視線を感じることが居心地悪く、少し目線を落とす。
『ふふ…緊張してるのかしらね。お互いに自己紹介でもなさったら?』
『金子颯太郎です。』
全くその気もない相手に緊張どころか気が滅入るが、親の面子を潰す訳にもいかず、淡々と話す。…だが、相手側は一向に話す気配がない。いい加減苛立ちを覚え顔をあげようとすると、か細い声が耳に届く。
車から降りると迷うことなく中へと入って行く。
『いらっしゃいませ。お待ちしておりました。』
女将の丁寧な出迎えに軽く挨拶をし、見合いの席が設けられているという個室に向かう。
部屋の前で軽く息を吐くと、覚悟を決める。
トントン
『失礼します。』
静かに襖を開けると部屋にいる人間の視線を一気に浴びているのが分かる。
『颯太郎こちらへ来なさい。』
声のする方を向くと、母が隣りに座るように促す仕草をする。颯太郎はそのまま言われた通りに空けてあるスペースに座る。
向かい側からの射抜くような視線を感じることが居心地悪く、少し目線を落とす。
『ふふ…緊張してるのかしらね。お互いに自己紹介でもなさったら?』
『金子颯太郎です。』
全くその気もない相手に緊張どころか気が滅入るが、親の面子を潰す訳にもいかず、淡々と話す。…だが、相手側は一向に話す気配がない。いい加減苛立ちを覚え顔をあげようとすると、か細い声が耳に届く。