ジャスミン

『く、倉田茉莉です…。』

（倉田茉莉か…何だ漸く喋ったか。）

『……。』


『…？…ん？』

耳を疑うような名前に颯太郎は一人首を傾げながら頭の中で名前を連呼すると、ハッとしたように顔をあげた。


『っ⁉︎茉莉…何で！』

目の前には着物を着て着飾った茉莉が座っていた。

『は？何これ…どういうこと⁈』

流石に動揺を隠し切れず、慌てふためく颯太郎に茉莉は苦笑いを浮かべるだけ。

「そうだ！」と事の顛末を知っているであろう早紀江の方に身体を向けると睨む。


『そんな怖い顔しなくたって良いじゃない〜。』

『まじで！どういうことか説明しろよ！』

今回の事は流石に笑って済ませられない颯太郎は強気で責め立てる。

『早紀江ちゃんだけが悪い訳じゃないのよ。…あなたにとっては初めてましてよね、颯太郎さん。茉莉の母の倉田由梨です。』

割って入るように声を掛けられ、そちらに向くと茉莉の隣りに座っていた母と名乗る女性に颯太郎も我に返ると慌てて頭を下げる。