ジャスミン
〜茉莉〜

週末は特に予定もなく、久しぶりに部屋でゆっくりしながら過ごした。


そんな訳で余計に頭によぎるのは、まだ一度しか会っていないあの人のこと。

『…ぁあ~!どうしたのっ私!?』

両手で頭を抱え、天井を仰ぐ。

思い出すのは、ぶきらっぼうな彼ではなく、時折見せる優しい眼差しやフッと笑う顔。

(…どっちかと言うと、それが彼の素の姿なのかも。)

雰囲気的に仕事も出来そうで、もちろん容姿も良くて周りの女の人がほっておかないのが容易く想像できる。

(彼にとったら私とのことなんて、すぐ忘れてしまうようなことなんだろうな…。)

茉莉はベッドの上で枕を抱えながら、まだ残る紅い痣に手を触れる。

(…というか、私覚えてないしっ!もったいないっ!!あぁ…本当にバカだぁ!)

最終的に彼との情事を覚えていない自分を責めるのだった…。

『あっ!連絡先聞いてない…。』

次の約束をしようにも無理なことにも気づく。

美香に聞けば、良いのかもしれないが…恐らく、月曜日には彼女の尋問が待ち構えているだろう。

『ぅわぁー。休みたい…。』

心からの叫びを呟き、入社してから初めて登校拒否ならぬ出勤拒否が頭に巡った。


週末には、韓流ドラマを欠かさずチェックしていたのに、一度も思い出すことなく休みを過ごすことになることを茉莉はまだ気づいていないー。
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