ジャスミン
『まぁ、大きな仕事だから皆も妥協できないんだ。おまえもだろ?』

部長はそういうと、自らもブラックコーヒーに口をつけ、美味しそうに飲んでいる。

『あぁ、そういえば、今夜あいてるか?あいつ出張に出掛けてるんだよ。』

部長の言葉に身体がびくっとなる。

(…そうだ。部長にもきちんと話さなくっちゃー。)

『はい。私もお話があるので…。』

『そうか。じゃあ、いつものとこでな。』

部長は茉莉の返事を聞くと、片手を挙げて部屋を後にした。


『はぁー。』

茉莉は机の上に額を乗せ目を閉じる。

(今の私、全部中途半端だ…。)

この仕事をやりきる力と部長との関係を終わりにする力が自分に残っているのか不安で仕方ない。

全ては自らまいたもの…。現実は酷なもので、一つひとつ乗り越えていくしかない。


どれくらい、その体勢でいたのだろうか?茉莉は目を開き、自分に言い聞かすかのように頷くと部屋を後にした。
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