ジャスミン
その後の茉莉はデザイン案を眺めながら、新しくデッサンに取り掛かろうとするものの、ペンが動くことはない…ネガティブな感情の無限ループを繰り返すだけで時間は過ぎていくー。


茉莉は仕事が気掛かりではあるものの、まず一つ目の決着をつけるべく早々に会社を出ることにした。

会社から駅に向かう道とは反対の方向へ五分ほど歩くと、路地に入ったところに公園がある。

ここは、健司との待ち合わせ場所だ。

公園前の駐車場には既に見覚えのあるシルバーの車が停まっていた。



~私が佐伯部長こと佐伯 健司と所謂、不倫関係になったのは3年前のことだ。

その頃、私は秋の新作の案を出してみないかと初めて佐伯部長から声をかけてもらい、毎日のように終電間近まで事務所でデッサンをしていた。

『なかなか上手くいかないな…』

『がむしゃらにやったって、アイデアは浮かんでくるもんじゃねぇよ。』

事務所には私しかいないと思っていたのに背後からの声にビクッと身体が強張った。

『なんだよ、俺は幽霊か?(笑)』

振り返るとそこには佐伯部長が苦笑いしながら立っていた。
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