ジャスミン
『部長~驚かせないでくださいよ。』

実は幽霊などの類いが苦手な私は安堵のため息を吐いた。

『おまえが勝手に驚いたんだろ。はいっはい、今日はもうおしまい!送っていってやるから帰る用意してこい。』

部長に言われて壁の時計を見ると、とっくに終電の時間を過ぎていた。

『嘘っ!?全然気づかなかった~!送っていただいても良いんですかっ?急いで用意しますっ!』

タクシーで帰る料金メーターの金額を想像すると、慌てて帰り支度をして、部長の待つ地下駐車場に急いだ。


駐車場にはシルバーの高級そうなセダンのボンネットに身体の重心を預け、片手はスーツのズボンのポケットに突っ込みながら携帯をいじっている部長がいた。

(…すごく様になってるなぁ。)

佐伯部長はがっしりした体育会系の体格に、浅野○信似の顔立ちで社内でも憧れている人も少なくなかった。

『…何突っ立ってるんだ?来たなら声を掛けろよ!』

まさか見惚れてました、とは言えず、すいませんっと小走りで駆け寄った。
< 58 / 348 >

この作品をシェア

pagetop