ジャスミン
部長が車のキーレスを解除すると、私は後部座席に乗り込もうとドアに手をかけた。

『俺はおまえの運転手か?横に乗れよ!』

『いやー、さすがに奥さまに申し訳ないので~。』

佐伯部長は愛妻家で有名だった。いくら部下でも助手席に乗るのには気が引け、やんわり断りをいれる。

『あほかっ!そんなこと、おまえが考えることじゃねーよ、早く横に乗れ!上司命令だ。』

『上司命令っ!?…ずるいっ。』

これ以上逆らうのは身の為ではないことを悟り、助手席に乗せてもらうことにした。


夜のネオンに時折、照らされる運転している部長の真剣な表情に、少し心拍数が上がるのを感じながらも当たり障りのない会話をしながら車は進んでいた。

『おまえの時間ちょっと貰うぞ。』

えっ!?と驚く間もなく車は高速の入口に向かい、速度をあげていった。

『…あの、いったいどこに…?』

高速に入り、30分くらい経っただろうか、車はパーキングエリアに停まった。
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