ジャスミン
部長の親指が優しく跡をたどるように涙を拭うー私は衝動的に頬に当たるその手を握って部長を見つめた。

そのまま、お互いに引き寄せられるように煌めく夜景の中、唇を重ねた…。


ーこうして茉莉と健司との人には言えない関係が始まった…

あの時の私と部長の気持ちは恋愛感情とはまた違うものだったのかもしれない…
お互いに見つめるべきことから逃げていたんだーー。


茉莉は健司との関係が変わった夜のことを思い出し、その場に立ち止まると車をじっと見つめる。そしてその車内に居るであろう彼の姿を思い浮かべると、『ふぅー。』とゆっくり息を吐く。

小走りで車へと向かうと、以前は躊躇していた助手席に戸惑うことなく乗り込んだ。
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