ジャスミン
『はぁー。走るの速すぎだろっ。』

息を切らしながら、必死に追いかけてくれた颯太郎の顔を見上げると、茉莉は自分を抑えられなくなり、そのまま颯太郎にしがみついて声を震わせて泣き出した。

そんな茉莉の様子に戸惑ったように両手を宙にさ迷わす颯太郎だったが、次第にその手を茉莉の背中にまわして、まるで子どもをあやす様にトントンと心地よいリズムで茉莉の心を癒して行くーー。


『…ごめんなさい。』

茉莉は落ち着きを取り戻すと、颯太郎の腕から離れた。

『あぁ。…いったいどうしたんだ?』

颯太郎の疑問は当然で、茉莉は一連の自分の行動を思い出すと、迷惑をかけたのだから説明しなくちゃ!という気持ちと自分の最悪な姿を知られたくない!という気持ちの葛藤に言葉が出ない。

颯太郎には自分を偽ることはできない!という気持ちに一度目を閉じてから颯太郎に顔を向けた。

『じ、じつは「ふっふっくっく…はっは。」

茉莉の決意空しく、突然の颯太郎の笑いに唖然とする。
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