ジャスミン
『くっく…ごめん。あんまりにも凄い顔をしてるから、つい。』

颯太郎の言葉に自分の顔を両手で隠す。

あれだけ、泣いたのだ。マスカラもアイラインも、きっと流れてお世辞にも、まともな顔ではないことが分かる。

『ふっふ…なんか可笑しい。』

茉莉も笑いが込み上げて、今度は笑いからくる涙が出る。

目尻に浮かぶ涙を手で拭き取りながら、なお笑いが止まらなくなる。


ポツリ、ポツ、ポツ‥

空から雫が落ちてくる。次第にその雨は強さを増していく。

茉莉は颯太郎に腕をひかれて、ちかくの軒下に入る。

お互い空を見上げ、無言になる。


茉莉はそっと、颯太郎の横顔を覗き見る。

(この人といると、私が私らしくいれる。やっぱり…)

茉莉は颯太郎に特別な感情を抱いていることを認めざる得なかった。

『…雨、止みそうにないな。』

颯太郎は呟くように言うと、視線は空のままに茉莉の手を繋ぐ。

『…うん。』

茉莉も颯太郎に気持ちを伝えるかのように、ギュッと握り返した。
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