ジャスミン

女たちの甲高い挨拶を適当にかわしつつ、自分のデスクに着くと一際甲高い声の女が近寄ってくる。

『課長～っ！おはようございますぅ。』

『…あぁ、おはよう。』

一際甲高い声で媚びるように上目遣いをするこの女は三上汐里。明らかに仕事をする為ではないような、身なりに嫌気がさす。

そんな俺の対応にも怯むことなく、話し続ける。

『週末はどこかに行かれたんですかぁ？汐里は課長に会えなくて寂しかったですぅ。』

他の男なら可愛いって思うのかもしれないが、俺には逆効果だ。

『始業時間だから、仕事しろ！』とあしらって、今日のスケジュールを確認する。

汐里は悪びれた様子もなく、『はぁーい。』と自分の席ではなく、化粧直しに向かった。

トイレでは、素の状態に戻った汐里と同期の由紀がグロスを塗りながら会話を交わす。

『よくやるわねぇ、課長全然じゃん！』

『うるさいわね、次期社長よ！絶対に落としてみせるわ。』

鏡で自分の姿を満足気に確認すると、意味深な微笑みを浮かべ、部署へと戻っていったー。