ジャスミン
さっきまでのフラフラの茉莉は何だったんだ?というくらいの俊足と、恐らく変質者にでも間違えられたんだろう自分に舌打ちをする。

やっと捕まえられる距離まで追いついたー逃がしてたまるか!


『おいっ!ちょっと待てって!!』

片方の腕を掴み、茉莉の逃走を止めるとその勢いで目が合う。

『はぁー。走るの速すぎだろっ。』

『!?』

俺は息を飲んだ。茉莉が俺に抱きついてきたのだ。

(…震えてる。泣いてるのか?)

茉莉は俺にしがみつき、震えながら涙を流していた。

俺は宙にさ迷わせていた両手を茉莉の背中に回し、トントンと気持ちを落ち着かせるようにたたいた。

(いったい何があった?何がこいつをこんなに苦しめるんだ!)

颯太郎は姿の見えない原因に苛立ちを感じながらも、茉莉を守ってやりたいという特別な感情が芽生えていくのを認めざる得なかった。


暫くすると、落ち着いたのか俺から離れて『…ごめんなさい。』というか細い声がした。
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