ジャスミン
ーー怖いーー

彼に対して抱いた初めての感情。

信頼を寄せていただけにショックは想像以上だが、茉莉に出来ることは真摯に向き合っていくことしかないー。


『よしっ!』

颯太郎の温かい手のぬくもりが、私に力を与えてくれるように感じる。

『…頑張れ、わたし。』

昔からの茉莉の口癖のようなものだ。
ツラいことがあると自分に言い聞かせる。

いつまでも、長湯している場合ではない。颯太郎も、茉莉同様ずぶ濡れのはずだ!

そのことに気がつくと急いで浴室を出る。手早く着替えると、颯太郎がいるであろう、リビングへと向かう。


(寝てる…。)

颯太郎はソファの背もたれにもたれ掛かるように腕を組み寝ている。

そっと近づくと、颯太郎の顔をのぞきこむ。

(綺麗な顔だなぁ。)

女子も顔負けの極めの細かい肌に長いまつげ。


吸い込まれるかのように、近づくとその唇に口付けをした。
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