ジャスミン
ゆっくりその唇から離れながら、閉じていた目を開けると、ぐいっと身体ごと引き寄せられる。

『え!?んっ!』

後頭部を押さえられながら、何度も重ねられる口付けに動揺しながらも茉莉は再び目を閉じて応えていく。

『はぁー。』

離される温もりに寂しさを感じながらも、再び抱き寄せられる颯太郎の胸に顔を埋める。

『さっき我慢したのにな。』

玄関でのことだろうか。茉莉だけの願いではないことが分かり、頬が緩むのを感じる。と同時に自らキスをしてしまったことに、どうしようもなく、恥ずかしくて顔をあげられない。


『なぁ。』

颯太郎は抱きしめる力を緩めると、茉莉の顔を覗きこむ。

『何でキスしたの?』

そう尋ねる颯太郎の顔は、まるで答えを分かっているかのように意地悪な表情を浮かべる。

『あ、あの、えっと…。』

自分の顔が赤くなっていくのが分かる。

『なに?』

煽る颯太郎の顔は、完全にいじめっ子だ。茉莉の手を引き寄せると、その指先に優しく口付けをする。
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