ジャスミン
〜颯太郎〜

俺は茉莉の指先に優しく口付けをしながら、彼女の口から出るであろう言葉を待った。

雨の中、茉莉の手を握って走りながら俺は仕事とかを言い訳にするんじゃなくて、純粋に「この手を離したくない」と思った。

今まで出会ってきた女たちとは、明らかに違う茉莉に俺という人間を見てほしくなった。

こんな感情を抱くことはもうないと思ってたけど、目の前で真っ赤な顔をして狼狽えるこいつが愛しくて仕方ない。

玄関であのままキスをしてしまったら、もう自分を止められなくなると逃げてしまった上に、下着を着けずに俺の服を着てる彼女にどんな顔をして会えばいいかと寝たふりまでしていた情けない奴だけど、俺は


  おまえのことが好きなんだーー。


もう一度キスをしようと茉莉の手首をひく。


『…!?なんだこれはっ!』

茉莉の華奢で白い手先から視線を上にあげると手首に真っ青な痣を見つけた。
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