ジャスミン
俺の言葉に茉莉はサッと自分の腕をひくと胸元でまるで匿うように反対側の手で押さえる。

よく見ると、その反対側の手首にも同様の痣が見えた。

俺は茉莉の両手掴むと自分の方に寄せて、その痣を見つめる。

茉莉は一気に顔色を悪くして俯いている。

(…こんな痣、余程の力で押さえつけでもしなきゃできない。もしかして、これが泣いていた理由なのか?)

悪い予感しかしない。


『なにがあった?』

俺はなるべく動揺を隠して優しく問いかけた。

『……。』

茉莉は俯いたまま、口を真一文字に閉じて何かに耐えているようだ。

俺は、茉莉を身体ごと引き寄せ腕の中に包み込むともう一度問いかけた。

『なにがあった?』


茉莉は何かを決意したように、軽く俺の胸を押し、離れると今までのことを話し出した。



『…だから、私が全部悪いの。わ、私はあなたの側にいる資格なんてないのに何を言おうとしてたんだろう…。』

最後の方は、まるで自分に問いかけているかのようだった。
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