ジャスミン
〜茉莉〜

自分の耳を疑った。好きなのは私が颯太郎さんのことであって、片思いだと思っていたのだ。

でも、彼は確かにそう言ったのだ。

『嘘みたい…。』

いや、でも今はそんな感傷に浸っている場合ではない。

さっきまで私をすっぽり包み込んでいた颯太郎は、荒い息をしながら私にもたれ掛かるように意識を失っている。

雨でずぶ濡れになったのに、私を優先してお風呂に入れてくれた彼はすっかり身体を冷やしてしまったのだろう…。


『もう私、自分のことばっかり!』

もっと早く気づいてあげなければいけなかった。

罪悪感でいっぱいになった私は、颯太郎の身体を何とか起こし、抱えながら寝室に運ぶ。

意識は朦朧としつつも、颯太郎も足を動かしてくれたので、やっとの思いでベッド身体を預けた。

(とりあえず、冷やして何か水分をとってもらわなくちゃ!)

茉莉はいそいそと浴室の方に向かい、戸棚からフェイスタオルを取る。そして、
キッチンからタオルを浸せるようなボール、冷蔵庫からミネラルウォーターを準備する。

『あっ!冷却シートあった。』

全てを持って、寝室の颯太郎の元へと戻った。
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