ジャスミン
『すごく辛そう…。』

颯太郎は、眉間に皺を寄せて荒い息をしていて苦しそうだ。

冷却シートを服を捲り、両脇、背中に貼る。昔、母親がよくそうしてくれたのだ。貼る瞬間は身体をビクッと反応させたが、少し穏やかになった気がする。

(水分をとって欲しいけど、身体を起こすのは無理だよね…?)

茉莉は意をけしてペットボトルのミネラルウォーターを自分の口に入れると颯太郎に口移しで飲ませる。

ゴクッゴック…颯太郎も少しずつ飲んでいる姿を見て安心すると、浸していたタオルを搾って水が零れた口まわりや、汗をかいている額などを丁寧に拭いていく。


一通りのことを済ますと、ベッドの端に上半身を預け颯太郎の顔をのぞきこむ。

(少し楽になったのかな?良かった…。)

颯太郎の寝顔は相変わらず、綺麗で少し汗をかいているが、先程よりは楽になったように感じる。

落ち着くと再び思い出すのは、彼の言葉。

知り合ったばかりで無理はないが、彼のことを何も知らないことを思い知らされた。でも、自分のことをペラペラと話すタイプには見えない颯太郎が、私に心の内を話してくれたことが本当に嬉しかったのだ。
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