ワケアリ男子の秘密
ある日。
いつものように俺たちは二人で図書館に居た。
「先輩、いつも読んでるそれ、何なんですか?.....しかも英語ですか?」
首をかしげて谷田が問う。
俺は
ちょっぴりからかってやろうと思った。
俺は目を細めてニンマリした。
「エ・ロ・本。」
谷田は一瞬で顔を赤くした。
「しかも男と男の濃厚シーン。朗読してやろうか?」
谷田はあわてて俺の口を塞いだ。
「いりませんから!そんな朗読!」
.....かわいいやつ。
俺は谷田に口を解放してもらうと言った。
「冗談だよ。これ、ハムレットだよ。」
「ハムレットぉ?」
谷田がすっとんきょうな声を上げた。
「そ。だから残念ながら谷田君が考えてるいかがわしい本ではありません。」
それを聞いた谷田は腕を組むと言った。
「....まったく。変なウソはやめてくださいよ」
「俺はクオーターなの。母さんがイギリスのハーフで父さんが日本人。」
谷田はなるほど、という顔をしてうなずいた。
「先輩、英語喋れるんですね?」
「そんなとこかな。」
すると谷田は目を輝かせて言った。
「スゴい!そのルックスの上に英語まで!」
嬉しさ半分、恥ずかしさ半分で
「たいしたことない。」
と言って顔を背けてしまったのが
間違いだった.....
「あれれれー?先輩どうしたんですか?
....もしかして、照れちゃってる、とか」
にやにやした谷田が執拗に俺の顔を見ようとしてくるのがウザすぎる。
とうとう耐えられなくなった俺は
谷田の腕を掴んで目を合わせて
こう言った。
「おまえな。あんまりそういうことしてると、襲うぞ。」
これくらいビビらせとけば、
もうしないだろう....
と思って言っただけなんだけどな。
谷田が
みるみる顔を真っ赤にして
目を反らした。
そんな谷田の反応が
俺の鼓動を早める。
なんだこれ。
俺は谷田の困った顔がもっと見たくなった。
とたんに意地悪な心が
頭をもたげる。
谷田の耳にぐっと顔を近づけると囁いた。
「襲ってほしいの?」
「......っ!」
これ以上は無いってくらい谷田が赤くなった。
そしてぽそっと呟いた。
「すいません.....もうしません...。」
「分かればよろしい。」
俺は
手を離した。
「か....帰りますっ
朱雀先輩の、意地悪!」
俺は極上のスマイルを添えて、
手を振った。
「バイバーイ。」