ワケアリ男子の秘密
「朱雀先輩!イケメンな人でしたね。ちょっと変わってますけど....友達ですか?」
「あぁそうだよ。」
先輩は抑揚を抑えた低い声で
早口に言った。
その横顔はかなり不機嫌そうに見えた。
「....先輩、怒ってるんですか..?」
先輩はゆっくり振り向いたかと思うと、
私にぐっと顔を近づけた。
目と鼻の先に先輩のキレイな顔がある。
わぁ....顔が火照ってくるのが分かる。
「おまえ、無防備すぎ。今だってな。その顔、俺じゃなきゃ今頃襲われてるよ。」
んなァっ!!!
「これはしゃーないですよ!先輩の顔が近いからァっっ!」
「え、何?俺の顔が近いと不味いことでもあるの?」
先ほどの不機嫌モードから一転、
意地悪な顔になっていく先輩。
不味いです!
私の心臓に悪いんです!
────なんて言えるわけもなく。
俺は目を白黒させていた。
「それに、いきなり来なくなるしよ。なんなんだよ、おまえ」
私から視線を外してムスッとする先輩。
「もしかして、待っていてくれてたんですか.....?」
だんまりを決め込んで
向こうを向く先輩の耳は、
ちゃっかり赤くなっている。
時折出てくる、先輩の意外な面。
悪いとはおもいつつ、
私は声を抑えて笑ってしまった。
「......っくくくっ!」
「....笑うな!!」
こちらを振り向いた先輩は案の定真っ赤だった。
「はー、すいません。このところ来れなかったのには理由があって。」
「なんだよ?」
「実は女装大会にクラス代表で出させられることになりましてぇ...」
先輩は目を輝かせて私を見た。
「マジで!?ちょー楽しみ!じゃあ俺はおまえの王子役に立候補しようかな~!」
王子役?
「なんですかそれ。」
「知らないの?女装する1、2年のエスコート役。3年がやるんだよ。それを王子って言うわけ。王子は立候補制なんだけど、だいたい1、2年が3年に頼みに行ってる」
聞いてないぞぉーーー!
洋平め!こんな大事な情報、
ちゃんと教えろよ!
「そうなんですか...え!先輩が俺のエスコート?いいんですか?」
「もちろんだよ!こんなイケメンな王子、居ないぜ?おまえの株も上がるってもんよ!」
先輩、いつにも増して
上機嫌でよく喋るなぁ...
気合い入ってるし。
ま、いっか。