ワケアリ男子の秘密
きゃぁぁあああ!
カシャカシャ!カシャ!カシャ!
目映い光と、黄色い声の渦巻く舞台。
カメラのシャッター音。
先輩の笑顔につられ、
私も笑って手を振ってみる。
そして、ランウェイの端まで来ると。
ふわっと体が浮くのを感じた。
きゃぁぁあああ!
黄色い歓声が響く。
先輩の胸に抱かれてる私。
私お姫様だっこされてる!
エスコートってこういうことかよ!
私は顔から火が出そうになるのを
堪えた。
が、先輩は一向に降ろす気配が無いんだよ。
「ちょっと、先輩!早く降ろして下さいよ!」
しかし。先輩はみんなに笑顔を振り撒きながら
「困ってる谷田ちゃんもいいね~♪」
なんて言って、取り合ってくれない。
てか先輩キャラ違ってない?!
ようやく降ろしてもらった。
まったく、先輩め....
地面に足を着けた時
少し視界がグラついた。
あ、私どんだけ緊張してんだ....
でも頑張れ!私!
せめて裏方に戻るまで!
でも、うーん、気分悪い!
かつ、かつ、かつ....と
パンプスが床を鳴らす音が下半身から私の脳内に響く。
ドックン。ドックン。
自分の心臓の音が聞こえる。
続いて、自分の息づかい。
その瞬間、体が一気に傾いて────
繋いだままの先輩の手を引っ張っているのを感じた。
「谷田!?大丈夫か!しっかりしろ、おい谷田───」
私、大丈夫.....じゃないです..
この声を聞いて最後、
目の前が真っ暗になった。