その扉の向こう側
「俺、お前のこと嫌いだよ」


ゆっくりとしゃがみ、お姉ちゃんの眠っている墓に手を合わせた。

真波は悲しそうな表情で目を閉じ、俺の後ろで頭を下げていた。


「中学に入ってから、月命日になると必ずこの墓に花が供えてあった。

それは天気が悪い日でも必ず・・・

高校二年の6月に初めて誰が供えてくれているのか分かったんだ」


最初はお姉ちゃんの両親かと思っていた。

だから、何も聞かずにその花を見つめるだけにした。

だけど、そうじゃなかった。


「本当に嫌いなのは、それを知っていてこんな態度しかとれない俺だ」


今、目が合わさったら、俺はきっと視界が滲むだろう。

そうなることが、嫌なわけではない。

しかし、それはあまりにも自分勝手すぎる行為になる気がして、俺は敢えて彼女と目を合わせずに背中を向けたままにした。


「初めてここであなたを見かけたとき、会うことが怖かった。

それからは鉢合わせしないように、時間をずらして来るようにしていた。

中学三年のとき同じクラスになって、もう逃げられないんだなと思った」


もう一度、手を合わせた。



今度は俺の横にしゃがみ、彼女は一緒に手を合わせた。
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