その扉の向こう側
「お姉ちゃん、ごめん。

お姉ちゃんのことずっと忘れないようにしていたけど、こんなふうに覚えていられて辛かったよね。

お姉ちゃんも・・・そして、ここにいる真波にも辛い思いをさせていたよ」


閉じていた瞼をゆっくりと開け、隣を見ると彼女も瞼を閉じていた。

合わせていた手を下ろし、同じようにゆっくりと瞼を開いてこちらを見つめてきた。


「私のほうこそ、辛い思いをさせてごめんなさい」


彼女は良い人だ。

俺はこんなにも良い人を、憎んでしまっていたのだ。


「真波。今まで散々と失礼なことをしてきたけど、お願いがあるんだ」


そして、俺は都合のいい男だ。

だけど、この言葉だけはこの場所で言わなければいけない。
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