その扉の向こう側
自分のクラスの教室へと移動し、黒板に書かれた席へと座った。



俺にとっての中学生活は、家と学校の往復だけの日々だった。

家にいれば時間を潰すように勉強ばかりしていた。

もちろん、三年になったからといって今更それを変えるつもりも、行動力も俺には無かった。


「あっ、北澤くん。

初めて同じクラスだね」


すぐ隣の席を座る椅子の音に振り向き、その声の主に目を向けた。



その瞬間、全身が固まっていくようだった。


「ごめん、名前なんだっけ?」


たったこれだけの一言に、まるで百メートルを全力で走るような体力を使ったようだった。


(そんなはずはない)


言葉が返ってくるまで、俺は先ほど見たばかりのクラス割を必死で思い出していた。

確かにマナミという名前の女子はいなかったはず。


「本当に女の子に興味が無いんだね」


彼女は笑みを浮かべながら体の正面をこちらに向けた。
< 6 / 20 >

この作品をシェア

pagetop