光の破片
ランディは山々に囲まれた街の中に建つ城を見つめていた。
何度も気配が感じる塔へと近づこうとするも、目に見えぬ力に阻まれ一定の距離から近づく事さえ出来ない。
普通の狼より数倍も大きい身体。
その銀色に覆われた体毛からは血が流れていた。
もどかしい…そんな思いで小高い森の木々の間から吠える。
リリアン…
森深くに捨てられていた幼いリリアン。
5歳だったろうか。泣くこともせず、ただ立ち尽くし、我を見ても運命を受け入れる大人びた目をしていた。
あの出会いも運命だった。
探す手間が省けたとその時は喜んだが、お前は笑うことを知らなかったな。
いつも空を見上げては泣いていた。
知らなかったろう?リリアン。お前は泣いていたんだ。
我は我のやるべき事も忘れ、お前を喜ばせたくて柄にもなく頑張ったよ。