胡蝶蘭
驚く芦屋くんに私は首を振った。


「幻滅しないよ!!私は、芦屋くんを凄いって思うから!!」


芦屋くんは目を見開くと少しだけ吹き出した。


「ははっ。やっぱ、幼なじみちゃんに暴露して正解だったな……」


「え?あの……、芦屋くん……?」


「どうして俺がこの秘密を幼なじみちゃんに話したと思う?」


「え……?どうして……」


「簡単な話だよ。幼なじみちゃんを信頼してるから」


信頼……。


その言葉が胸の中に暖かく広がった。


「だから幼なじみちゃんも俺を信じてほしいんだ。俺を信じて、隠し事しないでほしい」


真剣な芦屋くんの目に涙が零れた。


この人なら大丈夫だって、根拠のない確信が浮かんだ。


「芦屋くんと、雅くんに、近付くなって……っ」


「うん」


「学校中の女の子達に、追いかけられて……っ」


「うん」


「どうしたら、いいか、分からなくて……っ」


「そっか。ごめんね」


「ち、違うの!!芦屋くんは何も悪くないの!!」


どうしたら上手く伝えられるだろう。


芦屋くん達は何も悪くないって、どうしたら伝えられるだろう。


ただ泣きじゃくる私の背中をポンポンと優しく叩いてくれる芦屋くん。


「俺が、どうして幼なじみちゃんに構うのか。幼なじみちゃん、考えた事ある?」


「え……?」


「俺、幼なじみちゃんみたいなタイプに弱いんだよね」


芦屋くんはそう言うと私の涙を拭った。


「杏里ちゃん。雅ばっかりに、守らせないでよ」


不意に呼ばれた名前。


赤くなる顔。


速くなる鼓動。


ドキドキした時間を壊したのは、昼休み終わりを告げるチャイムだった。

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