胡蝶蘭
「ごめん」


「え……?」


「泣かせたかったワケじゃない」


そう言うと雅くんは私の手を引っ張った。


今度は優しく。


その事にドキドキして、私の涙は自然と引っ込んだ。









マンションに着くと雅くんは私に手を出した。


「え?」


不思議そうに雅くんを見上げると雅くんがため息をついた。


「鍵」


「鍵?」


「早く。中入れねぇだろ」


そう言うと雅くんは私の手から鍵を奪い取るとそのままドアを開けた。


そして私は雅くんに中に入れられた。


扉を閉めると制服のボタンを2つほど開ける雅くん。


色気ありすぎる!!


「杏里」


「え!?」


「まだ辛い……よな。だったらいい」


「え?え?」


「とりあえずお前、顔洗ってこい」


雅くんが呆れたように笑って私の頬を親指で優しく擦った。


その指が優しくて赤くなる。


私はコクコク頷くと急いで洗面所へ向かった。


赤くなった顔を見て頬を押さえる。


どうしよう……。


ドキドキして苦しい。


雅くんと2人でこうやって一緒に居られるなんて。


まだ皆は学校なのに、私達は早退して……。


二人きり……。


………………え?


二人きり!?


事の重大さに気付いて今度は真っ赤になる。


あんなイケメンと二人きりだと!?


どうしよう……!!


心臓持たないよ!!


そんな事を思ってると後ろから抱き着かれた。


鏡に映るのは、雅くん。


「雅くん!?」


「お前いつまでかかってんだよ」


「え!?えっと……」


「一緒に飯作るぞ。俺も食ってねぇんだから」

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