胡蝶蘭
そうだ。


私も雅くんもご飯食べてない。


あれ?


「雅くん、食べてないの?」


「購買行こうとしたらクラスの奴がお前見つけて何か言ってたから気になって探しに行った」


探しに来てくれたんだ……。


嬉しくなって顔がにやける。


その顔を隠すように俯いた。


「いいから早くしろって。腹へった」


雅くんはそう言うと有無を言わさず私の手を掴んでキッチンへ連れてきた。


「杏里が俺の弁当作らないからこうやって早退する事になってんだからな」


「え!?なな、なんで!?」


「これに懲りたら、明日から俺の弁当も作れよ」


雅くんの言葉に驚きながら私は冷蔵庫を開けた。


どうしよう……。


何を作ればいいのかな。


「オムライス」


「え?」


「俺、杏里の作ったオムライス食いたい」


甘まえたようにそう言う雅くんにドキッとする。


そういえば雅くん、昔からオムライス好きだったっけ。


私は頷くとオムライスを作り始めた。


オムライスが出来上がると雅くんに隣に座らされて一緒に食べる事になった。


なんか、緊張しすぎて味わからない……。


黙々と食べる雅くん。


それから優しく笑った。


「やっぱり旨い……」


その笑顔だけでお腹いっぱいだよ……。


私は赤くなりながらオムライスを食べた。


食べ終わったあと、片付けている私に雅くんが声をかけた。


「杏里」


「え?」


「なんでお前、俺に助け求めないわけ?」


「大丈夫だよ?後片付けなんてすぐ……」


「そうじゃなくて」


雅くんに手を掴まれて顔を覗き込まれる。


あまりの近さに息を呑んだ。


「お前昔から嫌がらせされてんじゃん」


「それは……」


「俺に、助けられるの嫌?」


「え、あの!?」


シンクに両手をついて迫ってくる雅くん。


逃げられない!?

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