胡蝶蘭
「え!?え、あの!?」


「杏里って……」


雅くんが何か言いかけた瞬間電車がやって来た。


何を言ってるか聞こえなかった。


首を傾げると雅くんはフッと笑って私の手を引っ張って電車に乗り込んだ。


相変わらず人が多くて嫌になる。


おじさん達に押し潰されそうになりながら電車に揺られる。


息がしづらい。


今日はいつもより苦しいかも……。


そう思っていると急に息がしやすくなった。


え?


顔を上げると雅くんがおじさん達から助けてくれていた。


「雅くんっ!!」


「お前、小さいんだから簡単に潰されるぞ?」


「雅くん苦しくない……?」


心配になってそう聞くと雅くんは優しく笑った。


「俺は男だから」


こういう雅くんの優しいところ、好き。


雅くんの制服を軽く掴む。


すると雅くんに抱き締められた。


赤くなる顔。


早鐘を打つ心臓。


この心臓の音がどうか聞こえていませんように!!


そう願いながら目をつぶった。

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