胡蝶蘭
学校に着くまで離してくれなかった手。


教室に着くと雅くんは私の手を離して私の頭をポンと撫でた。


「それじゃ、杏里。放課後待ってろよ。一人で帰るとかしたらお前ん家行ってお仕置きだから」


「はい……」


「ん。いい子」


雅くんは優しく笑うと手を挙げて去って行った。


カッコイイな。


でも、私には遠い。


唇を噛み締めて教室に入る。


すると教室にいた人達の目が突き刺さった。


ヒソヒソ話されるのは嫌い。


気持ち悪くなる。


足早に席に向かうと近くに座っている女の子達が舌打ちした。


「なんだよ。今日も来たわけ?」


「梶原くんにベッタリしちゃって」


「アンタに梶原くんは似合わないって言ってんじゃん」


「幼なじみだか何だか知らないけど、近くにいると不快だから消えてよ」


何が面白いのか、女の子達はケラケラ笑うとまた話し出した。


どうしていつも同じ事言われなきゃいけないんだろう。


私は頑張ってるよ。


雅くんから離れようとしてる。


本当は離れたくないのに。


でも私のせいで雅くんが嫌な思いする方が嫌だから。


頑張ってるよ。


でも雅くんが優しいから……。


涙が零れそうになる。


私は俯いてそのまま動けなかった。

< 6 / 17 >

この作品をシェア

pagetop