胡蝶蘭
そうして時間が過ぎるのを待っていると、チャイムと同時に教室に男の子が入ってきた。


「やっべー!!セーフ!?」


「おせーよ、零士(れいじ)」


「いやー、ごめんごめん。雅と話し込んじゃってさ」


「おはよう、芦屋(あしや)くん」


「おはよっ、子猫ちゃん」


そう言って彼がウインクすると女の子達が黄色い悲鳴をあげた。


彼は芦屋 零士くん。


雅くんのお友達。


カッコイイ人の友達はカッコイイ人で、芦屋くんも凄い人気者だ。


物凄いプレイボーイでリップサービスが上手すぎる。


そしてノリがいいので男の子にも人気だ。


そんな芦屋くんが私の隣だから、私は更に色々言われるんだ。


「おはよう、幼なじみちゃん」


「おはようございます……」


「元気ないぞ?幼なじみちゃんがそうだと雅が心配ですっ飛んでくるかもね?あ、それ面白そう」


笑いながら携帯を取り出す芦屋くん。


笑い事じゃない。


「ねーねー、それより。幼なじみちゃんの番号教えてよ。幼なじみちゃんでこの学校の女の子コンプリートするだけどなー」


「いえ……、それは……」


「えー?なんでー?だって幼なじみちゃんも俺の友達でしょー?」


「そんな恐れ多い……」


「ははっ。幼なじみちゃん面白い。恐れ多いってなんだよー」


1人楽しそうな芦屋くん。


芦屋くん、気付いて下さい。


周りの殺気立った目を。


「幼なじみちゃん。何か付いてるよ?」


そう言われて顔を触る。


芦屋くんは笑いながら私の顔に触れるとそれを取ってくれた。


「なんでホッペに綿付けてんの?可愛すぎなんですけど」


「あ、ありがとうございます……っ」


「ねぇ?それどっちの意味でのお礼?綿取ってあげた方?それとも……、可愛いって言った方?」


不意に耳元でそう言われて真っ赤になる。

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