胡蝶蘭
耳を押さえて芦屋くんを見ると芦屋くんは可笑しそうに笑っていた。


だから、笑い事じゃない!!


半泣きになっていると先生が入ってきた。


「はい、座れー。出席とるぞー」


ダルそうにそういいながら入ってくる女の人。


私のクラスの担任だ。


「洋子(ようこ)ちゃん、もっとテンション上げていこーよ。美人な顔が台無しだよー?」


「うるさいな、芦屋。昨日飲みすぎたんだ。頭に響くからお前のそのテンションで話しかけんな」


大丈夫かな、先生。


心配になりながらボソッと呟く。


「一ノ瀬(いちのせ)先生、大丈夫かな……」


本当に小さな声で言ったのに芦屋くんには聞こえたみたいで……


「洋子ちゃーん。幼なじみちゃんも心配してるよー?」


「えっ!?」


ワタワタする私を見て先生は目を細めた。


「天使か、岸本」


「洋子ちゃん面白すぎー」


「お前は悪魔だな、芦屋。天使な岸本が穢される前に席替え考えとくか」


「えー?俺、幼なじみちゃんのアドレスまだ聞けてないからちょっと待ってよ」


先生はため息をつきながら出席をとっていった。


芦屋くんって、本当に何を考えてるか分からない。


雅くんからは、芦屋くんの言う事全部スルーしとけって言われてるけど……。


周りの人と楽しそうに話してる芦屋くんを見て小さくため息をついた。


あ。


芦屋くんの後ろの髪、ハネてる。


寝癖、かな?


凄く気になって凝視してしまう。


そんな私の目線に気付いた芦屋くんが私を振り向いた。


「どうしたの?幼なじみちゃん」


「あ……。えっと、後ろの髪……」


「髪?」


「寝癖……」


そう言うと芦屋くんは自分の髪を触って目を見開いた。


「わあ、ホントだ。幼なじみちゃん直してよ」


「え!?」


なんて無茶ぶり。


どうしよう!?

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