胡蝶蘭
困っていると先生が芦屋くんの頭を叩いた。


「天使を困らせるな。あとで水道で水頭からぶっかければ直る」


「ぶっかけるとか洋子ちゃんエロい」


「はいはい。それじゃ今日も何事もなく過ごせよ」


そう言って先生が去って行った。


立ち上がって動き出すクラスメイト達。


芦屋くんも周りに直ぐに友達がやって来た。


邪魔にならないように息を潜める。


すると教室に雅くんがやって来た。


え?


雅くん!?


他の女の子達も驚いてる。


キャーキャー言いながら雅くんを見ている女の子達。


雅くんはキョロキョロすると私の方へ歩いてきた。


え!?


なななな何で!?


い、いや、落ち着け杏里。


雅くんは芦屋くんに用があるに違いない。


私なんかに用なんて……。


「杏里」


「ひっ!?」


「なんて声出してんだよ。お前今日美術の教科書持ってる?」


「う、うん。ちょっと待ってて……」


机の中を探していると芦屋くんが声をかけてきた。


「おーい雅。なんで幼なじみちゃんに直行で聞くわけー?俺も持ってるよ?教科書」


「零士の教科書、落書きだらけで見にくいから嫌」


「えー?楽しいじゃん」


「楽しさ求めてないから。あ、杏里サンキュ」


雅くんが少し笑って私の頭を撫でる。


うう……。


雅くん、好きすぎる……。

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