男嫌いな“淑女(レディ)”の口説き方
「工藤さん、どうしたんですかね?工藤さんが頼まれていることを忘れるなんて滅多にないし…それに、いつもはあんな歯切れの悪い言い方しないのに……。」
観月くん……。
「工藤さんの『子供が苦手。』は嘘っていうか、違うと思うんですけど…。前に、俺と外で昼飯食べて会社戻ったってことがあって…。帰る途中で迷子の男の子に声掛けてたんですよ?"きっと家で良いパパなんだろうなぁ…。"って思ったんですけど……。」
そんなことがあったのね、桜葉くん。
私にも、工藤さんが子供に苦手意識があるようには見えないのよね。
「まぁ、工藤には工藤の…【事情】があるさ…。あまり 勘繰るな。……それより、[小児科]へ急ごう。」
私たちは少し歩く速度を上げて小児科へと急いだ。
**
「あー!“すばる兄”と“みやびお姉ちゃん”が来たっ!」
あれは… 三沢 潤平くんだ。
そんな風に思っていると、彼が私たちの方に駆け寄ってくる。
「潤平、シー!静かに。静かにしないとまた怒られるぞ。ほら、今日は院長先生も居るし。それに、ゆっくり来ないと…また喘息起こすだろ?」
課長が分かりやすく院長先生の方を見ると、潤平くんは"しまった!"という顔をしていて… 状況が分かっている院長先生も、ちょっとだけ"怒るよ"という雰囲気を出すように眉を動かした。
でも、その後すぐ表情を和らげた院長先生に…本気で怒っていないと感じ取った潤平くんは安心した様子で「えへへ、ごめんなさい。」と謝っていた。
ふふっ、可愛い。
やっぱり院長先生は、さすがの“院長先生”で…子供たちも分かっているようだ。
院長先生を怒らせたらダメなんだと。
「看護師さんたちのパソコン壊れてないか見たら、病室行くから。待ってられるな?」
「うん。」
そう言った潤平くんは、自分の病室へと戻っていく。
小児科病棟だけあってナースステーションや廊下の壁には、人気アニメのキャラクターや有名なテーマパークのキャラクターたちを画用紙で模ったものが飾られている。
そして、私たちは看護師さんたちのPCの点検作業を進めていく。
「こんにちは、お世話になっております。〔Platina Computer〕です、点検に参りました。」
「昴くん、いつもありがとう。あら?姫野さん?受診にしては早い時間だし…。」
「本日は仕事で参りました、今井師長さん。4月1日付で本条課長の下で働くことになりました。」
「あら、同じ会社にお勤めだったのね。それじゃ今日はよろしくお願いします。…それから、いつも子供たちの相手までありがとうございます。皆さんには本当に頭が上がらないのよ?観月くんや桜葉くんも訪問してくれた時には、昴くんと小児科まで来てくれるし。」
「いえいえ、僕たちはそんなに来てませんから。お礼なら本条課長に。」
「何言ってるんだよ。これからは2人も来るんだって伝えただろ。今井師長さん、今日以降は観月や桜葉も訪問の度にお世話になります。」
「あら、そうなんですね。これからよろしくお願いしますね。」
そんな会話をしつつ、看護師さんたちのPCを点検していき…特に目立った問題が無かったから早々とナースステーションを後にして、子供たちが待つ各病室へと向かった。
「(コンコン)…入るよー。」
「“いんちょうせんせー”だ!!」
「さて、今日も来たよ。“おもちゃのお医者さんのすばる先生”が。」
「ぼくからなおして!」
そう言って、本条課長の足元にタックルにも似た【突撃】をしてきたのは、佐藤 賢太くんだ。
「けんた、おまえずるいぞ!!おれがいちばんだぞー!」
子供たちは、どうやらいつも通り元気いっぱいのようで…“利也くん” と“賢太くん” は、【かわいいケンカ】をしていた。
「分かった、分かった。直してやるから。順番だ。」
「“みやびお姉ちゃーん”!絵本読んで!」
仕事中なんだけど……。どうしよう。
「おぉ…課長。相変わらず、すげー人気者。」
「“姫野先輩”の人気も、すごいですね。」
「じゃあ、みんな待ってる間に“雅お姉ちゃん”か“院長先生”に絵本読んでもらって。」
「はーい!」
あっ。課長…ありがとうございます、サラッと朗読の許可を下さって。
それにしても。 みんな良いお返事で、かわいい。
この、元気と笑顔…本当に天使ね。
「観月、桜葉、津田。今のうちに直していこう。」
「はい。」
よろしくお願いしますね、“おもちゃのお医者さん”方。
「本条課長、これって…どのサイズですか?」
「目視…まだ慣れないのか、観月。"2-"だな…ほらよ。」
「課長、"5+"ありますか?」
「桜葉、ここから勝手に抜いていけ。」
"2マイナス"? "5プラス"?
何のことかしら?
私は、読み聞かせをしながらも本条課長たちの会話も何気に気にして聞いていた。
1つ1つおもちゃを丁寧に直していく本条課長は、直している最中に「もうすぐ直るから」といった子供たちへの声掛けも怠ることはなく、素敵だなと思った。
「さて、戻るか…オフィスに。」
「はい。」
こうして私と津田くんは、初営業をしっかりとやり遂げ…再び課長の運転でチームメンバーとともに会社へ戻る。
観月くん……。
「工藤さんの『子供が苦手。』は嘘っていうか、違うと思うんですけど…。前に、俺と外で昼飯食べて会社戻ったってことがあって…。帰る途中で迷子の男の子に声掛けてたんですよ?"きっと家で良いパパなんだろうなぁ…。"って思ったんですけど……。」
そんなことがあったのね、桜葉くん。
私にも、工藤さんが子供に苦手意識があるようには見えないのよね。
「まぁ、工藤には工藤の…【事情】があるさ…。あまり 勘繰るな。……それより、[小児科]へ急ごう。」
私たちは少し歩く速度を上げて小児科へと急いだ。
**
「あー!“すばる兄”と“みやびお姉ちゃん”が来たっ!」
あれは… 三沢 潤平くんだ。
そんな風に思っていると、彼が私たちの方に駆け寄ってくる。
「潤平、シー!静かに。静かにしないとまた怒られるぞ。ほら、今日は院長先生も居るし。それに、ゆっくり来ないと…また喘息起こすだろ?」
課長が分かりやすく院長先生の方を見ると、潤平くんは"しまった!"という顔をしていて… 状況が分かっている院長先生も、ちょっとだけ"怒るよ"という雰囲気を出すように眉を動かした。
でも、その後すぐ表情を和らげた院長先生に…本気で怒っていないと感じ取った潤平くんは安心した様子で「えへへ、ごめんなさい。」と謝っていた。
ふふっ、可愛い。
やっぱり院長先生は、さすがの“院長先生”で…子供たちも分かっているようだ。
院長先生を怒らせたらダメなんだと。
「看護師さんたちのパソコン壊れてないか見たら、病室行くから。待ってられるな?」
「うん。」
そう言った潤平くんは、自分の病室へと戻っていく。
小児科病棟だけあってナースステーションや廊下の壁には、人気アニメのキャラクターや有名なテーマパークのキャラクターたちを画用紙で模ったものが飾られている。
そして、私たちは看護師さんたちのPCの点検作業を進めていく。
「こんにちは、お世話になっております。〔Platina Computer〕です、点検に参りました。」
「昴くん、いつもありがとう。あら?姫野さん?受診にしては早い時間だし…。」
「本日は仕事で参りました、今井師長さん。4月1日付で本条課長の下で働くことになりました。」
「あら、同じ会社にお勤めだったのね。それじゃ今日はよろしくお願いします。…それから、いつも子供たちの相手までありがとうございます。皆さんには本当に頭が上がらないのよ?観月くんや桜葉くんも訪問してくれた時には、昴くんと小児科まで来てくれるし。」
「いえいえ、僕たちはそんなに来てませんから。お礼なら本条課長に。」
「何言ってるんだよ。これからは2人も来るんだって伝えただろ。今井師長さん、今日以降は観月や桜葉も訪問の度にお世話になります。」
「あら、そうなんですね。これからよろしくお願いしますね。」
そんな会話をしつつ、看護師さんたちのPCを点検していき…特に目立った問題が無かったから早々とナースステーションを後にして、子供たちが待つ各病室へと向かった。
「(コンコン)…入るよー。」
「“いんちょうせんせー”だ!!」
「さて、今日も来たよ。“おもちゃのお医者さんのすばる先生”が。」
「ぼくからなおして!」
そう言って、本条課長の足元にタックルにも似た【突撃】をしてきたのは、佐藤 賢太くんだ。
「けんた、おまえずるいぞ!!おれがいちばんだぞー!」
子供たちは、どうやらいつも通り元気いっぱいのようで…“利也くん” と“賢太くん” は、【かわいいケンカ】をしていた。
「分かった、分かった。直してやるから。順番だ。」
「“みやびお姉ちゃーん”!絵本読んで!」
仕事中なんだけど……。どうしよう。
「おぉ…課長。相変わらず、すげー人気者。」
「“姫野先輩”の人気も、すごいですね。」
「じゃあ、みんな待ってる間に“雅お姉ちゃん”か“院長先生”に絵本読んでもらって。」
「はーい!」
あっ。課長…ありがとうございます、サラッと朗読の許可を下さって。
それにしても。 みんな良いお返事で、かわいい。
この、元気と笑顔…本当に天使ね。
「観月、桜葉、津田。今のうちに直していこう。」
「はい。」
よろしくお願いしますね、“おもちゃのお医者さん”方。
「本条課長、これって…どのサイズですか?」
「目視…まだ慣れないのか、観月。"2-"だな…ほらよ。」
「課長、"5+"ありますか?」
「桜葉、ここから勝手に抜いていけ。」
"2マイナス"? "5プラス"?
何のことかしら?
私は、読み聞かせをしながらも本条課長たちの会話も何気に気にして聞いていた。
1つ1つおもちゃを丁寧に直していく本条課長は、直している最中に「もうすぐ直るから」といった子供たちへの声掛けも怠ることはなく、素敵だなと思った。
「さて、戻るか…オフィスに。」
「はい。」
こうして私と津田くんは、初営業をしっかりとやり遂げ…再び課長の運転でチームメンバーとともに会社へ戻る。