男嫌いな“淑女(レディ)”の口説き方
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[白石 渚]
詳しくはHP見なさいね。↓
h△tp://◯◯◯◯-infini/
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ほんと、抜かりねぇな…。

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[本条 昴]
分かった。サンキュ、姉さん。
代表者、俺か“先輩”だな。分かった。
姉さんも来れるんだな、ありがとう。助かるよ。
奏士(そうし)義兄(にい)さんに礼言っておかないとな。
ジャージやジーンズはNGな、了解。伝えるよ。
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[白石 渚]
どういたしまして。(^_^)
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さて、グループトークに流すか。

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[本条 昴]
皆さん、食事中に失礼。
今朝、話していた姫野さんとの【飲み会】についての連絡だ。
俺の姉の友人で、『infini』というジャズバーを経営している人が居るようで
【貸切】の予約が可能かどうか、姉を通じて聞いてもらっていた。
予約が取れなければ、他の店の候補も募るところだったが
【貸切】で予約が取れたようだ。
【貸切】の理由は、姫野さんの疾患についての話をする際に
部外者が立ち入らない状況にしたいからだ。
金曜の夜に貸し切れる所なんて、なかなか無いし
今回はここでどうだろうか?
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[本条 昴]
1人あたりの予算は、4000円〜5000円だ。
今回は金の心配をしすぎるなよ。
いざとなったら管理職組が出すから。
来週の金曜はライブが無いからもう少し安いと思う。
ジャージやジーンズは、NGだそうだ。
HPで確認した感じだと…
男性:テーラードジャケット+チノパン
女性:ワンピースまたは、ワンピース×ボレロ
ぐらいが良いみたいだな。
メニューなんかはURL貼り付けておくから
気になった人は、確認を。
h△tp://◯◯◯◯-infini/
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さて、どう反応されるかだな……。

…ん? グループじゃなくて個別のトーク通知?
あぁ、“鳴海先輩”か。

俺は個別のトークルームに切り替える。

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[鳴海 新一]
なんで僕が居ない間にしれっと送ってんの!
お前の反応、見れないじゃん!(笑)
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…んなもん、今送るでしょうよ。
甘いぜ、“先輩”。俺で【遊んで】…何もなかったなんてことないでしよ。(笑)

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[本条 昴]
知らないですよ。
喧嘩売られたんで、頭使って仕返ししたまでです。(笑)
腹減ってるんで、早く戻ってきて下さい。(笑)
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それだけ返して、グループトークの方に画面を戻した。

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[姫野 雅]
わぁ!ジャズバーなんて久しぶりです。
良いですね!白石先生のイチ押し!
それは絶対ステキな所でしょうね!
皆さんが良ければ、私…ここに行ってみたいです!
服装も、おしゃれ着ですね!承知しました!
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[立花 静香]
ジャズバー…素敵ですね。
さすが課長。素敵なお姉様がいらっしゃるようで。
でも。私、ジャズなんて馴染みがなくて…。
初めてですけど、楽しめますか?
でも、行ってみたいかも!(^_^)
うん?“白石先生”って…どなたですか?
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[鈴原 柚奈]
ジャズバーなんて…私も初めてです。
大丈夫ですかね?!(>_<)
(立花さんと同じ悩みです。)
あと、お酒が心配です…。
でも、白石先生イチ押しのお店…
行ってみたいです!!
――――

姫野さんはジャズバー経験者みたいだし、女性陣の反応は上々だな。
さて。“先輩”の【一番見たがってたところ】も見せずに済んだし、フロアに戻るか。

俺は女性陣への返信を打ちながら、〔部長室〕を抜けてフロアの自席に戻ろうと…足を進める。

なんだ、みんな一緒に居るんじゃねーか。
そこには…今話してる女性3人だけでなく、(けい)(しゅう)、そして“Aチームの男3人”も居た。

「あっ、課長。おかえりなさい。」

「ただいま。姫野さん、立花さん。…直接喋っても良いが俺も部長が戻ったら昼飯だから、とりあえず打って残しておくよ。」

「残ってれば、後からでも読み返せますしね。」

立花さんが、そうサラッと返してくれる。

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[本条 昴]
さすがは女性陣。反応が早いな。
鈴原、立花さん。気負うことはない。
初めてでも楽しめるよ。
ジャズバーで、「初めてJAZZをまともに聞いた!」
なんて人はザラに居る。
なんなら、俺に聞いてくれても構わない。

あと、鈴原。
バーだから、甘いカクテルもちゃんとある。
心配いらないし、1杯だけでも大丈夫だ。
2杯目からソフトドリンクにする人なんて
ジャズバーだし、それこそ山ほど居るよ。
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[本条 昴]
立花さん。“白石先生”っていうのは、俺の姉だ。
フルネームは白石 渚。
おそらく【飲み会】の時に会うことになるから
本人から自己紹介してもらえばいい。医者なんだ。
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「なるほど、それでだったんですね!」

立花さんの納得したような声が聞こえた。

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[姫野 雅]
えっ、白石先生…来られるんですか!?
良いんでしょうか…。お家のこととか…。
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「姫野さん、心配しなくていい。姉さんも、それを分かったうえで段取りして来るって言ってたから。こちらの心配までありがとう!」

ホントに、あなたはよく気がつく。…ありがとう。

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[朝日奈 蛍]
ジャズバー、俺も行ったことないな。
まぁ。都内のジャズバーを網羅しつつある
昴大先生にいろいろ【いろは】を聞くとするか。
えっ。渚さん、来んの? マジで何年ぶり!?
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[堤 柊]
女性陣がこれだけ盛り上がってるし
良いんじゃないか?ここで。
渚さんに会うのなんて、何年ぶりだろうな。
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[鳴海 新一]
おいおい、さっきからやたらとバイブが鳴るなと
思ったら、すげー話進んでんじゃん!(笑)
まぁ、いいけどさ。(笑)
そうか。渚さんが来てくれるなら、それは大きいな。
良いよ…その店で。会計の件も分かったよ。

幕の内に、よく飲んでるブラックコーヒーも
付けとくから機嫌直しといてね。昴くん。
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「また、昴をからかうか…何かしたな?“先輩”。」

「どうせ、あれだろ?この【飲み会】の話で“しーちゃん”たちに騒がれそうって…面白がったってとこだろ?」

さすがに2人は分かってるな。

「朝日奈課長!今は休憩時間と言えど勤務中です。“しーちゃん”はやめて下さい。」

うん。立花さん、ごもっとも。

“静香”の“しーちゃん”か…。
砕けた呼び方や、呼び捨てで呼びたい…内心はそうなんだろう。

「もぉ〜。部長ったら!どこ行ったのかと思ったら、またそんなことが。本条課長なら許されると思ってる…。しかも私たちとの絡みをイジるなんて、サイテー。本当にごめんなさい。…ホント、奢ってもらって下さい。」

そうは言うものの、鈴原が本気で怒っていないことは苦笑と拗ねた口調で話す様子から感じ取れる。

はは。鈴原、言うなー。
良いんだよ、俺と“鳴海先輩”はそんな風に【ふざけてても成り立つ仲】だから。
でも、ありがとう。
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