男嫌いな“淑女(レディ)”の口説き方
「… 花純?慌てなくても“雅お姉ちゃん”も、“律にぃ”も、居なくならないよ。ちゃんとお話できただろ?…保育園での"お約束"は、お家でも"お出かけ"しても"お約束"なんだぞ?…【廊下は…?】」
「【はしらない!】」
「そう。…パパにちゃんと『ごめんなさい。』しような?」
「パパ。“すばにぃ”。“みやびおねえちゃん”…。ごめんなさい。」
「いいよ。ちゃんと謝れたね、花純。…昴くん、ありがとう。やっぱり…。僕や渚より花純の扱い上手いよ。」
「そんなことないでしょ、奏士義兄さん。」
義兄さんに頭を撫でられて、ようやく大人しくなるかと思いきや花純はまだまだ元気だった。
「“すばにぃ”、だっこ~!!」
「あー。はいはい、おいで。」
可愛い姪に上手にねだられた俺は、そのまま花純を抱き上げた。
「…あっ、ごめん!昴、雅ちゃん。もうこの子ったら…。大人しくしてないんだから。」
「姉さん。別に姫野さんのことは慌てなくていいと思う。落ち着いてるから。それより、花純がついてきてる気配があるなら見とかないと危ない…。まぁ、俺も義兄さんも見てたし、姫野さんが上手く気を引いててくれたから今は良いけどさ。」
「ホントごめん!」
姉さんが顔の前で手を合わせて、申し訳なさそうに謝ってきた。
さて。蛍と柊と立花さんは、なんで入ってこないんだよ。
外で喋ってんなよ、迷惑だから…。
「――いや、それにしても。“本条課長のお姉様”…本当にお綺麗でビックリしました。」
「…でしょ?渚さん。ホント美人なんだよなー。」
「おい、蛍たちもさっさと入れって。ドア開けっぱなしなんだから。」
「あ…あぁ、ごめん。」
「“すばる兄”、ごめん。僕が花純と手繋いどこうと思ったんだけど…。あっという間に、ママ追いかけてったから間に合わなくて…。」
「響。ごめんな、"置いてった"みたいになって…。花純と手繋いどいてくれようとしたんだな。ありがとな、さすが“お兄ちゃん”だ。…さぁ、中入ろう!」
立花さんや蛍たちと共に店内に入ると、“鳴海先輩”に声を掛けられる。
「ごめんごめん、昴!花純ちゃん元気すぎて捕まえられなかったわ。…相変わらず、元気いっぱいだね、“白石家のお姫様”は。」
「“しんにぃ”だ!“おひめさま”なの?かすみが?」
「ちがうの?」
「ううん、うれしい!」
「あはは、かわいい。…でもって。“すばにぃ”大好きなのは変わらずで、【り】以外の【ら行】の発音が苦手なのも変わりないんだな。」
花純の反応を見て、“鳴海先輩”も満足げに微笑んだ。
「そうですね、相変わらずです。」
「うん、“すばにぃ”だいすき!“すばにぃのおよめさん”にしてー!」
「はは。ホントにずっと言ってるな、花純は。いいよ。じゃあ、パパとママと3人で花純のドレス決めとくよ。花純がビックリするように内緒で決めとこうかな。」
「課長優しい。さすがです。花純ちゃんよかったね。」
姫野さん。あなたも乗ってくるとは思わなかったよ。
しかも、何であなたが嬉しそうなんだ?
「えっ、課長の姪っ子さん…かわいい!これは【骨抜き】ですね!でもレアね。こんな課長、会社じゃ絶対に見れない。」
立花さんありがとう、【骨抜き】か…まぁ、そうだな。
そりゃそうだろ、会社にこんなテンションで行けねぇよ。
「えっ、ここに“天使"が居る。かわいい。」
“天使"
ホントにそれだよな…。
「“おにいちゃんたち”と“おねえちゃん”、だぁれ?… “みやびおねえちゃん”と“ゆずおねえちゃん”はしってゆけど…。」
観月たちや立花さんを初めて見る花純に、「みんな、“すばにぃ”とおしごとする“おねえちゃん”と“おにいちゃんたち”で、“みやびおねえちゃん”と"なかよしさん"だ。」と教えておいた。
すると花純は、「しらいし かすみ 3さいです!」と自己紹介を始めて、それを聞いてたメンバーを【骨抜き】にしていた。
そして何気なく話を聞いていると、観月たちの呼び方まで決まっていた。
そして、それぞれの気が済むまで花純を相手にした後姫野さん以外のメンバーは、テーブルの周りに腰を落ち着かせていた。
「姫野さんも、座ってればいいよ。」
「こんなに可愛い花純ちゃんを独り占めなんて…ズルイですよ、課長。…もう少し、花純ちゃんを眺めてて良いですか?」
それこそ、そんな幸せそうな笑顔で言われたら…何も言えなくなるんだが――。
そしてそんなやり取りをしている最中、少し離れた所で“鳴海先輩”が小学2年の響の相手をしてくれている。
「響も久しぶり。元気にしてた?」
「うん、元気だったよ。“新兄”、またサッカーとか…リフティング対決しよ。」
サッカー好きなのは続いてるみたいだな、良いことだ。
「いいよ。4月は忙しいけど、5月は響ん家行けると思うよ。“すばる兄”と相談しとくな。」
「うん。ありがと…。」
「うん?響、どうした?」
「…え?…何でもないよ。」
…ん? 響と目が合うな。
さっきから見てるな、とは思ってるところだが。
「響くん、花純ちゃん、お待たせ。みんなの料理配れた。……オレンジジュースかアップルジュース飲む?」
「かすみ、オレンジジュースがいい!… “すばにぃ”、ジュース、ジュース!」
「はいはい。ジュース、ジュース。」
「花純。オレンジジュース飲むなら、ママの所にいらっしゃい。……ごめんね、昴。ありがとう。」
俺は、そう言ってくる姉さんに「いや、構わないけどさ。」と一言返し、花純を姉さんの元へ返したあと…入れ替えで響を呼んで隣に座らせた。
「響、どうした?…元気あるか?」
「あっ。オレンジジュースありがとう、“すばる兄”。…元気だよ。」
「ホントか〜?…何で元気なさそうにしてた、さっき…。」
「だって。“すばる兄”のとこに、いっつも花純がくっついてるじゃん!僕だって、“すばる兄”と話したいのに…。」
あー。やきもち焼いたのか。
「あー。なるほど、俺と話したかったのか。ごめんな、響。でも待ってくれたんだろ?ありがとな。それで?何の話からする?」
「春休み中に、リフティング10回連続でできるようになったんだ!」
「お、すごいじゃないか。ついに"10回の壁"は越えられそうだな!」
「うん!次は15回やってみる!」
「おう、頑張れ!」
響は、そう言って屈託なく笑った。
花純もそうだが、やっぱり純粋な笑顔はいいな…癒される。
普段の 刺々しさを忘れられるな…。
「そういえば、“すばる兄”ってさ…。本読むの、好きだっけ?」
「あぁ、好きだけど…。どうした?」
「どうしたらいいのかなぁ。本読むの嫌いで教科書の物語も、最後まで集中して読めなくて…。パパに見てもらった時は怒られないけど、ママには『集中しなさい。』ってよく怒られるんだ。」
俺は話を聞いて、思わず苦笑いした。
「【はしらない!】」
「そう。…パパにちゃんと『ごめんなさい。』しような?」
「パパ。“すばにぃ”。“みやびおねえちゃん”…。ごめんなさい。」
「いいよ。ちゃんと謝れたね、花純。…昴くん、ありがとう。やっぱり…。僕や渚より花純の扱い上手いよ。」
「そんなことないでしょ、奏士義兄さん。」
義兄さんに頭を撫でられて、ようやく大人しくなるかと思いきや花純はまだまだ元気だった。
「“すばにぃ”、だっこ~!!」
「あー。はいはい、おいで。」
可愛い姪に上手にねだられた俺は、そのまま花純を抱き上げた。
「…あっ、ごめん!昴、雅ちゃん。もうこの子ったら…。大人しくしてないんだから。」
「姉さん。別に姫野さんのことは慌てなくていいと思う。落ち着いてるから。それより、花純がついてきてる気配があるなら見とかないと危ない…。まぁ、俺も義兄さんも見てたし、姫野さんが上手く気を引いててくれたから今は良いけどさ。」
「ホントごめん!」
姉さんが顔の前で手を合わせて、申し訳なさそうに謝ってきた。
さて。蛍と柊と立花さんは、なんで入ってこないんだよ。
外で喋ってんなよ、迷惑だから…。
「――いや、それにしても。“本条課長のお姉様”…本当にお綺麗でビックリしました。」
「…でしょ?渚さん。ホント美人なんだよなー。」
「おい、蛍たちもさっさと入れって。ドア開けっぱなしなんだから。」
「あ…あぁ、ごめん。」
「“すばる兄”、ごめん。僕が花純と手繋いどこうと思ったんだけど…。あっという間に、ママ追いかけてったから間に合わなくて…。」
「響。ごめんな、"置いてった"みたいになって…。花純と手繋いどいてくれようとしたんだな。ありがとな、さすが“お兄ちゃん”だ。…さぁ、中入ろう!」
立花さんや蛍たちと共に店内に入ると、“鳴海先輩”に声を掛けられる。
「ごめんごめん、昴!花純ちゃん元気すぎて捕まえられなかったわ。…相変わらず、元気いっぱいだね、“白石家のお姫様”は。」
「“しんにぃ”だ!“おひめさま”なの?かすみが?」
「ちがうの?」
「ううん、うれしい!」
「あはは、かわいい。…でもって。“すばにぃ”大好きなのは変わらずで、【り】以外の【ら行】の発音が苦手なのも変わりないんだな。」
花純の反応を見て、“鳴海先輩”も満足げに微笑んだ。
「そうですね、相変わらずです。」
「うん、“すばにぃ”だいすき!“すばにぃのおよめさん”にしてー!」
「はは。ホントにずっと言ってるな、花純は。いいよ。じゃあ、パパとママと3人で花純のドレス決めとくよ。花純がビックリするように内緒で決めとこうかな。」
「課長優しい。さすがです。花純ちゃんよかったね。」
姫野さん。あなたも乗ってくるとは思わなかったよ。
しかも、何であなたが嬉しそうなんだ?
「えっ、課長の姪っ子さん…かわいい!これは【骨抜き】ですね!でもレアね。こんな課長、会社じゃ絶対に見れない。」
立花さんありがとう、【骨抜き】か…まぁ、そうだな。
そりゃそうだろ、会社にこんなテンションで行けねぇよ。
「えっ、ここに“天使"が居る。かわいい。」
“天使"
ホントにそれだよな…。
「“おにいちゃんたち”と“おねえちゃん”、だぁれ?… “みやびおねえちゃん”と“ゆずおねえちゃん”はしってゆけど…。」
観月たちや立花さんを初めて見る花純に、「みんな、“すばにぃ”とおしごとする“おねえちゃん”と“おにいちゃんたち”で、“みやびおねえちゃん”と"なかよしさん"だ。」と教えておいた。
すると花純は、「しらいし かすみ 3さいです!」と自己紹介を始めて、それを聞いてたメンバーを【骨抜き】にしていた。
そして何気なく話を聞いていると、観月たちの呼び方まで決まっていた。
そして、それぞれの気が済むまで花純を相手にした後姫野さん以外のメンバーは、テーブルの周りに腰を落ち着かせていた。
「姫野さんも、座ってればいいよ。」
「こんなに可愛い花純ちゃんを独り占めなんて…ズルイですよ、課長。…もう少し、花純ちゃんを眺めてて良いですか?」
それこそ、そんな幸せそうな笑顔で言われたら…何も言えなくなるんだが――。
そしてそんなやり取りをしている最中、少し離れた所で“鳴海先輩”が小学2年の響の相手をしてくれている。
「響も久しぶり。元気にしてた?」
「うん、元気だったよ。“新兄”、またサッカーとか…リフティング対決しよ。」
サッカー好きなのは続いてるみたいだな、良いことだ。
「いいよ。4月は忙しいけど、5月は響ん家行けると思うよ。“すばる兄”と相談しとくな。」
「うん。ありがと…。」
「うん?響、どうした?」
「…え?…何でもないよ。」
…ん? 響と目が合うな。
さっきから見てるな、とは思ってるところだが。
「響くん、花純ちゃん、お待たせ。みんなの料理配れた。……オレンジジュースかアップルジュース飲む?」
「かすみ、オレンジジュースがいい!… “すばにぃ”、ジュース、ジュース!」
「はいはい。ジュース、ジュース。」
「花純。オレンジジュース飲むなら、ママの所にいらっしゃい。……ごめんね、昴。ありがとう。」
俺は、そう言ってくる姉さんに「いや、構わないけどさ。」と一言返し、花純を姉さんの元へ返したあと…入れ替えで響を呼んで隣に座らせた。
「響、どうした?…元気あるか?」
「あっ。オレンジジュースありがとう、“すばる兄”。…元気だよ。」
「ホントか〜?…何で元気なさそうにしてた、さっき…。」
「だって。“すばる兄”のとこに、いっつも花純がくっついてるじゃん!僕だって、“すばる兄”と話したいのに…。」
あー。やきもち焼いたのか。
「あー。なるほど、俺と話したかったのか。ごめんな、響。でも待ってくれたんだろ?ありがとな。それで?何の話からする?」
「春休み中に、リフティング10回連続でできるようになったんだ!」
「お、すごいじゃないか。ついに"10回の壁"は越えられそうだな!」
「うん!次は15回やってみる!」
「おう、頑張れ!」
響は、そう言って屈託なく笑った。
花純もそうだが、やっぱり純粋な笑顔はいいな…癒される。
普段の 刺々しさを忘れられるな…。
「そういえば、“すばる兄”ってさ…。本読むの、好きだっけ?」
「あぁ、好きだけど…。どうした?」
「どうしたらいいのかなぁ。本読むの嫌いで教科書の物語も、最後まで集中して読めなくて…。パパに見てもらった時は怒られないけど、ママには『集中しなさい。』ってよく怒られるんだ。」
俺は話を聞いて、思わず苦笑いした。