さあ、好きになりましょうか。
「で、結局どうだったの? したの?」

「んなわけあるか! あと聞き方がどストレート!」


あたしが顔を真っ赤にする姿に七海がケラケラと笑った。


「ムキになっちゃって~。でも実際してもよかったって思わなかった?」

「思わないって。潰れてたし早く寝たかった」

「そっか。関谷くん、有言実行かあ。かっこいいわあ」

「……実行してないけどね」

「紳士って言ってたのマジだったんだあ。その場限りの苦し紛れの嘘かなとも思ったんだけどなあ」

「……七海、関谷をどんな目で見てんのよ」

「いくら相手が全く経験も色気もない愛子でも、こっちは盛りのついた絶好の高校男児よ」

「盛りがついてんのはお前の方だよ」


昼間から何を言っているんだ、こいつは。


あたしはため息を漏らしてパンにかぶりついた。


ここの大きいケヤキの木は夏の間は生い茂っていて、今は葉を黄色に染めて少し格好が寂しくなってきた。足元には落ちたケヤキの葉が広がっている。


今日は快晴だった。雲一つない青空が見える。


いつも室内で講義を受けたり部活をしているから、こうしてぼんやりと空を眺めるのはずいぶん久しぶりな気がする。


ここから一番近い高校が関谷がいる高校だ。


今、昼休みかな。何してるかな。


自分まで染まってしまいそうな青空を眺めてそんなことを考えた。


< 101 / 148 >

この作品をシェア

pagetop